賃貸住宅の物件を見ていると「インターネット完備」や「インターネット対応」などの記載がされている事がありますが、これを見るとインターネットが使える物件なんだな!となんとなくのイメージだけで捉える方が多いと思います。
しかし、このインターネット「完備」と「対応」では大きな違いがあり、間違った認識で賃貸住宅の契約をしてしまうと後々になって困り、人によっては引っ越す事もあるようです。
今回この記事では、賃貸住宅のインターネット「完備」と「対応」の違いについての解説とインターネット環境を重視した賃貸物件の選び方、考え方を紹介していきます。
賃貸住宅のインターネット環境!基礎知識
賃貸住宅の物件選びで重要なポイントは時代や住居者によって様々ですが、近年ではインターネット環境が整っているのか?完備・対応ができているか?という点が重要視されます。
そこで賃貸物件の選び方として重要となるインターネットの「完備」「対応」という用語についての意味と定義について詳しく見ていきましょう。
インターネット完備と対応の違いを理解しよう
まず、光回線やADSLなどのインターネット回線は、付近の電信柱から建物内の部屋や共用部分まで引き込まれます。このインターネット回線の配線方式は契約するひかり回線のプランや、戸建てタイプか?マンションタイプなのか?によって変わってきます。
今回は、賃貸の集合住宅についての解説なのでマンション(集合)タイプの一般的な配線方法を例にして書いていきます。

上記の図の様に、賃貸物件のインターネット回線は建物付近の電信柱から共用部分へと引き込まれ、さらに共用部分から各 部屋(世帯)まで分岐する仕組みとなっています。
■インターネット対応とは
インターネット対応と記載・紹介されている賃貸住宅は、一般的には「建物共用部分までネット回線の準備が完了している」という状態を示しています。という事は、インターネット通信を利用するためには別途プロバイダとの契約、共用部分から部屋までの回線準備が必要となります。
■インターネット完備とは
インターネット完備と記載されている物件は、「入居するとすぐにインターネット環境が使用できる」という事を示しています。インターネット回線の工事とプロバイダーとの契約がすでに済んでいる状態という事です。
インターネット回線の契約は物件の管理会社や家主さんがすでに済ませているので、めんどくさい手続きは不要で毎月の通信費はお住いの管理会社や家主さんに支払うと言う形が一般的です。
その他の記載事項について
賃貸住宅の物件探しをしていると、上記のような「インターネット対応」や「インターネット完備」以外にも様々な用語を目にすることがあります。
■インターネット無料とは
インターネット無料と記載されている物件は、インターネット環境を「無料で使うことができる」物件の事をいいます。回線の引込み工事やプロバイダーとの契約は管理会社や家主さんがやってくれていて、毎月の支払いも全て管理者が負担します。
■光ファイバー対応(光回線)
光回線とは現在主流となっている光ファイバーケーブルを利用した高速ネット回線です。光ファイバー対応とは「共用部分までは光ファイバー回線の工事が完了している」という状態の事で、インターネットを利用する為には、賃貸物件とは別でプロバイダ契約や部屋までの引込み工事が必要です。
パソコンやスマホ・タブレットなどの通信端末をすぐにインターネットに接続し無料で利用できますが、場合によっては無線ルーターをご自身で用意しWi-Fi環境を作る必要もあります。
インターネット「完備」と「対応」どっちが良いのか?
インターネットの完備と対応はどっちが良いのか?
普通に考えれば、手続きなどの余計な手間がなく最初からインターネット環境が揃っている「インターネット完備」の方が良いですよね?
ですが「インターネット完備」と「インターネット対応」には双方にメリットとデメリットがあり、大容量の高速通信を必要としている方には「インターネット対応」の方がおすすめできるケースもあります。
- インターネット完備のメリット
- ・手間なくインターネットが利用できる。
- ・初期費用が通常の回線契約よりも安く済む
- ・月額料がプロバイダ契約よりも安い場合がある
- ・引っ越し時の回線解約の違約金などが発生しない
インターネット完備の物件は、回線工事やプロバイダ契約がすでに完了しているので入居後すぐにネットが利用できるメリットがあります。又、インターネット回線導入時の工事費用や月額利用料が通常のプロバイダ契約に比べて安くなる事が多いので全体的に費用を抑えることができます。
- インターネット完備のデメリット
- ・建物全体で同じ回線を利用するので混雑しやすい
- ・回線の最大速度がすでに決まっているので選べない
- ・回線速度に我慢できない場合は自身で契約が必要。
- ※物件によっては利用料金が家賃に含まれているので、もしもご自身で契約した場合2つの利用料金が発生するケースもあります。
完備型の最大のデメリットは「一つの回線を共有している」という点です。同じ回線を建物全体の世帯で利用しているのでアクセスが集中すると回線が混雑し通信速度が低下しやすくなります。
又、一概には言えませんが「完備型のインターネット回線」は最大速度が平均並みで、大容量の高速通信が必要になるネットゲームなどには向いていません。どうしても大容量の高速回線が必要な場合は別途プロバイダ契約や回線工事をしなくてはいけません。
物件によっては既存のネット回線を利用しない意思を伝えることで、回線を切る事もできます。契約に何らかの縛りがあった場合は、既存のネット回線とご自身で設けた回線の利用料金をダブルで支払わなくてはいけないパターンもあります。
- インターネット対応のメリット
- ・ご自身でプロバイダを自由に選択できる
- ・初期費用が通常の回線契約よりも安く済む
- ・完備型のインターネット回線よりは安定している
- ・IPv6(IPoE)接続サービスを利用できる場合がある
- ※地域や引かれている回線・プロバイダによります。
- ・引っ越し前の契約を引き継ぐこともできる
賃貸契約が完了した時点からインターネット回線の契約を事前に進める事ができます。契約した物件に導入されている回線によって変りますが、プロバイダーを自由に選択することができるので完備型の物件と比べると回線速度もある程度良くなるケースもあります。
IPv6(IPoE)接続サービスが利用できるのであれば、オプション契約することをおすすめします。IPv6は最新の接続方式で従来(現主流)のIPv4と比べて比較的に安定して高速通信が可能です。
又、引っ越し前に契約しているプロバイダ契約を引き継ぐ事も可能となります。ただし、物件によっては対応している回線が以前利用している回線に対応していないケースもあるので事前に確認するようにしましょう。
- インターネット対応のデメリット
- ・自身でのプロバイダ契約が必要となる
- ・回線工事などの初期費用が全て自己負担
- ・回線によってはプロバイダに制限がある
- ・非対応・未導入の回線を勝手には引込めない
インターネット対応の物件での大きなデメリットは「どの回線に対応しているのか?」という点です。例えば、導入されている回線がauひかりに対応していない場合は、別途回線の設備導入が必要となります。
そして別回線の導入は入居者自身が勝手に契約(工事)することはできないので、管理会社や家主さんの許可が必要となります。又、工事に掛かる費用は入居者(契約者)自身が負担しなくてはなりません。
自分でインターネット回線の手続きをする場合の手順
インターネット対応物件の場合は、賃貸契約が完了したあとからプロバイダとの契約が可能になります。※これまでは回線業者とプロバイダーは別々に契約しなければなりませんでしたが、最近はプロバイダが回線事業者も兼ねている(委託)ケースも多いので手続きがスムーズになっています。
- 手順は以下の通りです。
- 1.賃貸物件の契約
- 2.プロバイダー契約
- 3.部屋までの回線導入工事(立合い)
- 4.インターネットへの接続設定
- 以上がインターネット対応物件での一連の流れです。
導入されている回線を扱うプロバイダーとの契約は案外スムーズで、最短だと1~2週間くらいで開通できます。引っ越しシーズンになると申込者が増え、工事までの期間が長引くことで知られています。
- 非対応の回線工事が必要な場合
- 1.賃貸物件の契約
- 2.回線導入の許可(管理者から)
- 3.プロバイダとの契約
- 4.回線の導入工事(立合い)
- 5.インターネットへの接続設定
- 以上が非対応・未導入回線を契約する場合の流れとなります。
非対応の回線契約の場合は、前述した様に物件の管理会社や家主さんからの許可が必要になります。※導入工事は建物に回線用の穴や設備が必要となるので申込者(入居者)が勝手に契約⇒工事をすることはできないので管理者からの許可は必須の条件となります。
インターネット回線のタイプと特徴
インターネットの回線は大きく分けると「有線タイプ」と「無線タイプ」の2つに分類されます。そして分類されたタイプごとに様々な回線があります。
ここではその種類ごとにメリットやデメリットを紹介していきます。
有線タイプのインターネット回線
有線タイプのインターネット回線は電話回線や光ファイバー、電信柱などを利用して建物に直接引き込んでいるケーブル回線の事を言います。
■光回線(光ファイバーケーブル)
現・主流となっている回線で最も高速で安定した通信回線となります。ガラス素材のケーブルを利用し光を反射させる事で光速通信が可能となる設計らしく「光ファイバーケーブル」と呼ばれています。
- 光回線のメリット
- ・その他回線に比べて速度が早い
- ・通信品質が良く安定している。
- ・定額制でインターネットが使い放題
- ・最新のIPv6接続で従来よりも早く安定したインターネット通信が可能
- 光回線のデメリット
- ・他の通信回線に比べて月額料金が高額
- ・初期費用(工事費など)が高い
- ・申込から開通までの時間がかかる
- ・一部カバーエリア外の地域がある
■ADSL回線(有線)
固定電話の回線を利用したインターネット回線で光ファイバー回線が主流となる以前はこのADSL回線が主流回線として使われていました。通信速度はひかり回線に比べて遅く、大容量の高速データ通信には不向きなインターネット回線と言えます。
- ADSL回線のメリット
- ・光回線に比べて月額料金が安い
- ・初期費用を光回線よりも抑えられる
- ・定額制でインターネットが使い放題
- ・日本全国のほぼ全てのエリアで対応
- ADSLのデメリット
- ・光回線に比べて通信速度がかなり遅い
- ・新規受付を終了している事業者がほとんど
- ・2024年3月に廃止・サービス提供の終了
料金面では光回線よりは安く初期費用も抑えられると言われていますが、現在は光ファイバー回線への移行が進み、ADSL回線を使用しているユーザーは減少しています。ほとんどのプロバイダーや回線事業者がADSL回線の新規受付を終了していて、2024年3月にはサービスの廃止・終了が発表されています。
モバイル回線(無線)
モバイル回線とは、携帯電話やポケットWi-Fiなどの電波を利用したインターネット回線で現在主流となる4G電波回線などを使ったサービスの事を言います。
次世代型の5G通信回線の提供も始まっており、4G回線よりも更に高速で大容量のインターネット通信が可能になります。5G回線のサービス提供エリアはまだ拡大中で、全国エリアをカバーするまでにはどのキャリアもあと数年はかかると言われています。
■携帯電話(モバイル回線)
携帯電話の無線回線は大手キャリアのドコモ(NTT)/softbank/au(KDDI)/楽天モバイルの4つの回線網が主流で100社以上の通信事業者がサービスを展開しています。
価格帯は大手キャリアは通信速度やサービスの品質がトップレベルという事もあり、その他格安SIM事業者と比べて高めに設定されています。
■ポケットWiFi(モバイル回線)
ポケットWiFiの通信事業者は携帯でんわ事業者同様に、サービスを提供している会社は100社以上と言われサービス内容も様々です。
現在はどのポケットWiFi事業者からも使い放題などのプランは提供されていません。例外として、楽天モバイルがUN-LIMIT VIプランを利用したポケットWiFiは、月間の通信容量に制限がなく使い放題となっています。
スマホやタブレット同様、電波さえ届けば何処にいてもWiFiルーターとして利用できるのが最大のメリットとなります。通信速度はひかり回線に比べると遅く、使い放題ではないのがデメリットと言えます。
■softbankが提供するホームルーター(固定型)
ソフトバンクが提供しているモバイル回線を利用したホームルーターです。名称は「softbankAir」でポケットWiFiとは違い持ち運びができない固定型のWiFiルーターで、申込から製品到着までは最短~3日ほどで、自宅のコンセントにさすだけでWiFi環境が導入できます。通信速度や接続可能台数、WiFi環境の届く範囲はポケットWiFiよりも優れていて安定していると言われています。
メリットは「工事がいらないコンセントにさすだけ」の無線型のモバイル通信回線なので、賃貸住宅にお住いの場合でも自由に契約することができます。又、申込から開通までの期間が最短で~3日ほどなのですぐに導入できます。
そして最大のメリットとしては、ポケットWiFiとは違い「使い放題」で通信制限がないと言う点です。デメリットは光回線(有線)とは違うので通信速度や安定性は劣ります。
■UQmobileのホームルーター(固定型)
UQモバイルが提供するホームルーターはsoftbank Airと同様にコンセントにさすだけでWiFi環境が導入できる無線タイプのルーターです。
通信速度(最大)はsoftbankAirと同等の1Gbpsで最大接続台数も40台まで繋ぐことができます。WiFiルーター(ホームルーター)の本体価格はsoftbankAirが約6万円に対してUQのWiMAX「SpeedWi-Fi L02」製品は¥16,500円と安価で購入・導入できます。
失敗しないための基礎知識
引越し後、実際にインターネット回線を使ってみると通信速度が思いのほか遅く、ものすごく困ったという声を聞きます。
「インターネット完備」の賃貸物件の場合は、もうすでに回線工事やプロバイダーとの契約が済んでいます。一概には言えませんが、集合住宅の全世帯で使える「完備型のインターネット回線」は混雑しやすく通信速度は早いとは言えません。
どうしても「大容量の高速インターネット通信」が使いたいという方は、別で光回線の契約・導入工事を自ら行わなければなりません。ただし、新たに光回線を導入する場合は管理会社や家主さんからの許可が必要になり、勝手に契約する事はできないのでご注意ください。
共用部分まで通っている回線によって契約できる回線事業者やプロバイダーが変わってきます。選択肢はありますが対応していない回線の契約はできません。どうしても別回線を導入したい場合は上記でも説明した通り「新たに回線工事・契約」が必要です。
基本的に賃貸物件は借りているモノなので、所有者の許可がない限りは工事を行う事はできないという点は覚えておきましょう。
インターネット環境を重視した賃貸選び
インターネット環境を重視した賃貸物件の選び方は下記の通りです。
- ネット環境重視の賃貸選び
- ・回線が導入済みなのか確認する
- ・どの回線が通っているのかを確認する
- ・新たに回線工事を行ってもOKな物件なのか確認する
- ・使いたいプロバイダや回線の対応エリア内か確認する
賃貸物件を契約する前に必ず確認してほしいのは以上の4つです。これは「インターネット完備」「インターネット対応」「それ以外」全ての物件に対して行ってほしい確認事項です。
確認せずに契約すると、入居後に回線工事がNGだった場合は諦めるか・・引っ越すか・・という事になるのでご注意ください。
上記のことに注意して賃貸契約を進めていれば、いつでも自分のライフスタイルに合った光回線を導入することができ、お好きなプロバイダとの契約が可能となります。
まとめ
今回は「インターネット完備」「インターネット対応」の違いについて解説しました。どちらにもメリット・デメリットがあり、失敗しない為のネット環境を重視した賃貸選びには事前の確認が大事だという事が分かったと思います。
この確認ができていないと、やっと見つけた「良いプロバイダ・回線」の契約ができない。なんて事になりますので気を付けてください。
今人気のおすすめインターネット回線・プロバイダーについては下記の記事を参考にしてみてください。きっとあなたに合ったインターネット回線が見つかります。
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